もくじ
ホームページ、パンフレット、広告、SNS。
会社の発信物が増えるほど、「なんとなく見た目がバラバラ」と感じたことはありませんか?
デザイン会社に相談すると、「アートディレクション」という言葉を耳にすることもあるかもしれません。
アートディレクションとは、デザインの見た目の方向性を決め、完成まで制作全体をまとめる仕事のことです。
これを担う人を、アートディレクター(AD)と呼びます。
大切なのは、一つひとつのデザインの出来ばえだけでなく、「全体として何を伝えるか」をそろえることです。
アートディレクションは、そのための設計図と、現場の舵取りの役割を果たします。
今回は、アートディレクションの意味から、デザイナーとの役割の違い、制作の流れ、プロに依頼するメリットまでご紹介します。
アートディレクションとは?見た目の「方向性」を決めてまとめる仕事
アートディレクションは、広告、Webサイト、パンフレット、パッケージなど、目に見える表現(ビジュアル)について、
「どんな雰囲気で、何を、どう見せるか」を決め、その方向に制作をまとめていく仕事です。
アートディレクションで決めること
・コンセプト:この制作物で、誰に、何を伝えるのか
・トーン&マナー:色、書体、写真の雰囲気、余白の取り方など、見た目のルール
・表現の方法:写真で見せるか、イラストで見せるか、文字を主役にするか
・品質の基準:どこまで仕上がっていれば「完成」と言えるか
たとえば「信頼感のある会社に見せたい」という要望があったとき。
写真は明るく自然な光で、人の表情が見えるものにする。
色は落ち着いた紺を中心に、余白を広めにとる。
このように、言葉で表された想いを、具体的な見た目のルールに置き換えていくのがアートディレクションです。
「デザイン」との違い
デザインが一つひとつの制作物を形にすることだとすると、
アートディレクションは、複数の制作物や制作の工程全体を見渡して、方向をそろえることだと言えます。
家づくりにたとえると、デザイナーが部屋の内装や家具を形にする職人だとすれば、
アートディレクターは「どんな暮らしのための家か」を決めて、全体の設計と現場を見る建築家のような役割です。
アートディレクターとデザイナー・クリエイティブディレクターの違い
デザインの制作には、似た名前の役割がいくつか登場します。
会社や業界によって呼び方や担当範囲は異なりますが、一般的には次のように分けられます。
デザイナー:ビジュアルを形にする
デザイナーは、決まった方向性に沿って、実際にデザインを作る人です。
レイアウトを組み、色や書体を整え、写真やイラストを配置して、制作物を完成させます。
アートディレクター:ビジュアルの方向性を決め、統括する
アートディレクターは、デザインの方向性を決め、デザイナーやカメラマン、イラストレーター、コピーライターなどに伝えて、制作全体をまとめる人です。
お客様の要望を聞き取り、それを制作チームが動ける形に「翻訳」する、橋渡しの役割も担います。
制作の途中や完成前には、仕上がりを確認して修正の指示を出し、品質を保ちます。
クリエイティブディレクター:コミュニケーション全体を統括する
クリエイティブディレクター(CD)は、ビジュアルだけでなく、広告や販促の企画、言葉、媒体の選び方まで含めた、より大きな方針を決める役割とされることが多いです。
大きな広告の制作では、CDが全体の戦略を決め、ADがビジュアル面を担当する、という分担になることもあります。
小さな会社の制作では、一人が兼ねることも多い
大企業の広告のように大きな制作でなければ、これらの役割を一人や少人数で兼ねることも珍しくありません。
大切なのは肩書きよりも、「方向性を決めて、全体をそろえる人」がプロジェクトの中にいるかどうかです。
アートディレクションの流れ|コンセプト設計から品質管理まで
アートディレクションは、デザインを作り始める前から、完成した後まで続きます。
制作によって進め方は変わりますが、おおまかな流れは次のとおりです。
1.ヒアリングと課題の整理
最初に、お客様の会社や商品、伝えたい相手、今困っていることをお聞きします。
「かっこよくしたい」「若い人に届けたい」といった言葉の奥にある目的を探るのが、この段階の大切な仕事です。
ここで情報を整理しておくと、後の判断に迷いが少なくなります。
情報の整理については、見せ方の前に、整え方。伝わるデザインをつくる情報整理の基本でも詳しくご紹介しています。
2.コンセプトとビジュアルの方向性を決める
聞き取った内容から、「誰に、何を、どんな印象で伝えるか」というコンセプトを言葉にします。
そのうえで、色、書体、写真の雰囲気などの方向性を決めます。
このとき、イメージに近い写真や配色を集めて1枚にまとめた「ムードボード」を使うことがあります。
言葉だけだと人によって思い浮かべるものが違いますが、目に見える形にすると、お客様とも制作チームとも認識をそろえやすくなります。
3.チームへの指示と制作の進行
決めた方向性を、デザイナーやカメラマンなど、それぞれの担当者に伝えます。
撮影がある場合は、撮る場所や光の雰囲気、構図などの指示を出し、立ち会うこともあります。
4.確認と品質の管理
上がってきたデザインを、コンセプトに合っているか、媒体ごとに表現がそろっているかという目で確認します。
文字の大きさや余白の取り方、写真の色味など、細かな部分の修正指示もここで行います。
デザイナーの判断基準:迷ったら「コンセプトに戻る」
制作の途中では、「この写真とあの写真、どちらがいいか」「もう少し派手にしたほうがいいのでは」といった迷いが必ず出てきます。
アートディレクターは、そのたびに好みではなく「最初に決めたコンセプトに合っているのはどちらか」で判断します。
判断の軸がぶれないことが、仕上がりのまとまりにつながります。
複数の媒体をまとめる重要性|アートディレクションがないと起こること
アートディレクションの価値がいちばん分かりやすいのは、複数の媒体をつくるときです。
よくある「バラバラ」の例
・ホームページは制作会社A、パンフレットは印刷会社B、SNSの画像は社内で作っている
・それぞれは丁寧に作られているのに、色も写真の雰囲気も書体も違う
・お客様から見ると、同じ会社の発信だと気づきにくい
一つひとつの制作物に問題がなくても、並べたときにまとまりがないと、会社の印象はぼやけてしまいます。
方向性がそろうと、印象が積み重なる
アートディレクションによって、どの媒体でも同じトーン&マナーで表現されていると、
ホームページで見た印象と、パンフレットを手に取ったときの印象がつながります。
「この雰囲気といえば、あの会社」と覚えてもらいやすくなり、信頼にもつながります。
色やロゴの使い方をそろえる考え方は、ロゴの色とフォントはどう選ぶ?ブランドイメージを伝えるデザインの考え方でもご紹介しています。
アートディレクションをプロに依頼するメリット
アートディレクションを含めてデザイン会社に依頼すると、次のようなメリットがあります。
メリット1:想いが、ぶれずに形になる
社内の想いや強みを、プロの目で整理して見た目に落とし込みます。
「なんとなく良い」ではなく、「なぜこのデザインなのか」を説明できる形で提案できるので、社内での合意もとりやすくなります。
メリット2:媒体が増えても、全体の印象がそろう
ホームページ、印刷物、広告、動画などを同じ方向性で作れるため、後から制作物が増えても統一感が保てます。
トーン&マナーをまとめた資料を残しておけば、別の制作会社や社内の担当者が作るときの基準にもなります。
メリット3:やり直しが減り、進行がスムーズになる
最初に方向性を決めて共有しておくことで、「出来上がってみたらイメージと違った」という大きなやり直しが起こりにくくなります。
撮影やイラストなど、複数の担当者が関わる制作でも、窓口が一つになるので、お客様の確認の手間も減らせます。
依頼する前に準備しておくとよいこと
・制作の目的(問い合わせを増やしたい、採用につなげたい など)
・届けたい相手(年齢、立場、どんな場面で見るか)
・今ある制作物(ロゴ、ホームページ、パンフレットなど)
・好きなデザイン・苦手なデザインの例(他社のものでもかまいません)
・予算とスケジュールの目安
すべてそろっていなくても大丈夫です。
ヒアリングの中で一緒に整理していくのも、アートディレクションの仕事の一つです。
依頼先の選び方については、【失敗しない】デザイン会社の選び方|比較ポイントとチェックリストもあわせてご覧ください。
まとめ|アートディレクションは「全体をそろえる」ための設計図
アートディレクションについて、ポイントをふり返ります。
・アートディレクションとは、見た目の方向性を決め、制作全体をまとめる仕事
・デザイナーは形にする人、アートディレクターは方向を決めてそろえる人
・コンセプト設計、方向性の決定、チームへの指示、品質の管理までを担う
・複数の媒体をつくるときほど、全体の印象をそろえる役割が大切になる
まずは、自社のホームページや印刷物を机の上に並べて、見た目がそろっているかを確かめてみてください。
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